
「元祖仁右衛門家」は、北山鉱泉で最初に開かれた宿。昔から子宝の湯として知られ、今でも安産祈願で訪れる人が結構おられるそうですぞ。
夢枕のお告げ
北山鉱泉の起こりは江戸時代末期の慶応年間にさかのぼります。この村に住んでいた仁右衛門という男性が、産後の肥立ちが悪かった妻のために毎日近くの神社にお参りをしていました。ある日、仁右衛門さんの夢枕に神様(言い伝えによっては仏様)が現れ『神社のほこらの下から湧き出る水を沸かして浸からせなさい』と告げました。仁右衛門さんは喜び、言われたとおりにすると、妻は日に日に元気を取り戻していったそうです。
この話が近隣の村々へと広まると、お風呂を目当てに人が集まるようになりました。そのため、北山の村人たちは共同浴場を作りました。当時は山道を徒歩で登ってくるしかありませんでしたから、ここに来た人は何日も滞在することが多かったそうです。仁右衛門さんは、慶応3年(1867)に長期滞在する湯治客のために宿を開きました。これが「元祖仁右衛門家」の始まりです。

湯治の歴史を受け継ぐ宿
北山鉱泉はクセがなく柔らかいお湯なので肌にも優しく、赤ちゃんや妊婦さんでも安心して入れます。湯冷めしにくく全身がポカポカと温まるので、冷え性などに効果があるそう。「子宝の湯」「安産の湯」といわれるのも、血行を良くして体温を上げてくれるからだと考えられます。
150年以上の歴史がある元祖仁右衛門家ですが、明治時代には存続が危ぶまれる事態になったことも。なんと宿の主人が大きな借金を作って逃げ出してしまったのです。しかし、その後を引き受けた庵主さん(おそらく血縁者)が埼玉から駆け付け見事に宿を立て直し、長い年月をかけて借金も返済しました。庵主さんの手腕もさることながら、現在まで脈々と伝統を受け継いでこられたのは湯治客を引き付ける北山鉱泉の癒やしのパワーがあったからこそ。体も心も元気になれる宿として、多くのお客様に親しまれてきました。

お祝いや記念日に
ご家族やカップルで宿泊されるお客様が多い元祖仁右衛門家。3階にある大浴場「草笛の湯」の露天風呂は、平成28年(2016)に1人用の陶器製風呂にリニューアルされました。山里の景色を眺めながら、気兼ねなくゆったりとくつろぐことができます。また、露天風呂付きの客室が2つ(15畳・10畳)あり、プライベート空間の中でお風呂に入れるということで人気が高いそうです。
館内に飾られているイラストやメッセージは若女将の手によるもの。小さな宿ならではの温もりが伝わってくるようで、心がなごみます。結婚記念日や還暦のお祝いなどで、お客様ご希望のメッセージを入れた特製フレームを用意するサービスも行っています。こまやかな心遣いがうれしく、大切な人と何度も訪れたくなりますね。



〈温泉概要〉
泉質 単純泉(源泉に人工ラジウム泉をプラス)
効能 神経痛・神経衰弱・ロイマチス・痛風・冷え性・産前産後・月経痛・痔痛・湿疹・凍症・皮膚亀裂・打撲捻挫・子宝・安産
〈施設案内〉
大浴場(露天風呂付1、サウナ付1)…午前・午後で男女入れ替え
【元祖仁右衛門家】
富山県魚津市北山702
TEL 0765-33-9222
営業時間 日帰り入浴 10:00~15:00
日帰り入浴料 大人(中学生以上)600円/小学生以下300円
ホームページ http://www.niemonya.com/
※日帰り入浴は予約は不要ですが、不定休のため、事前に営業日をご確認の上、お越し下さい。
(2020年2月26日)