生粋の祭り男
1998年(平成10年)から住民の高齢化などを受け魚津市教育委員会で、たてもんの曳き手をお手伝いする「たてもん協力隊」が結成されました。小学生以上ならどなたでも参加することができ、毎年市内外から200〜300人のボランティアの皆さんもお祭りを盛り上げてくださっているとか。
美谷さんは見るだけではなく、ぜひ参加して欲しいとおっしゃるがです。
「よく食わず嫌いと言われますけど、いっぺん携わると面白みが出るんだと思います。日本人というか世界共通で、お祭りはどこ行っても一緒。見るよりもやっぱり、踊らにゃ損損みたいなもので、自分で携わることが重要だと思います。わたしとこなんか祭りばかになってしまっていますけど(笑)」と。
「僕も生まれつきの祭りばかなんです。どこのお祭りに行っても祭りばかというのはおられるんです。その中のひとりだと思ってください。祭りがなくなると僕は、骨が抜けた魚のようになるでしょうね。」と海苔さん。お二人は楽しそうに笑って語られます。お二人のお話をお伺いしていると本当にたてもんのことを愛していらっしゃるのがひしひしと伝わってきます。
新たな担い手たちへ繋げたい伝統のバトン
お二人が一番大事にされているのが、たてもんの継承について。各町内で伝統を繋いでこられていましたが、約8年前から何か一つ組織的にやりましょうということになり、小中学生を中心とした「たてもん継承少年団」を立ち上げられたがです。
「笛・太鼓から始まって、できれば担ぎ手まで継承していける人材を育てられればと思っているがです。」と美谷さん。その美谷さんと海苔さんの息子さんたちも、たてもん継承少年団の活動に一役買っていらっしゃいました。
「たまたまなんですが、うちの息子が太鼓、美谷さんの息子さんが笛を教えています。今まで笛は音を聞いて覚えるしかなかったのですが、教師をされている美谷さんの息子さんが、笛の演奏用に楽譜を作ってくれ、今の子供たちは楽譜を見ながら演奏できるようになったんです。」と海苔さん。ま たお二人は、村木小学校と道下小学校の生徒さんに、たてもんについての授業を行っておられます。
お二人は、町内の子供たちだけではなく魚津市全体の子供たちにも広く参加して欲しいと考えておられます。少年団や小学校での活動が将来、たてもんの継承へと繋がり、新たな担い手たちが活躍される日を楽しみにされています。
ユネスコ無形文化遺産への登録を目指して
現在、全国に33ある山鉾団体が一致団結して活動されていることがあります。それは、今年の秋にユネスコ無形文化遺産への登録を目指されているがです。富山県からは、魚津のタテモン行事と高岡市の高岡御車山祭の御車山行事、そして南砺市の城端神明宮祭の曳山行事が登録を目指します。ユネスコに登録されることによって、国内はもとより世界に向けて、たてもんをより広く知っていただく機会が増える一方で、登録されることで保全・管理の責任もより増えると予想されとるがです。
「私どもはなんとか今までやって来ましたが、今後ユネスコへの登録などを考えると、これからの方々の継承、維持管理が大変だと感じております。」と、美谷さんが胸の内を教えてくださいました。
地域の宝から、日本の宝としても守っていかなければならない大変さもありますが、先人たちが守り継いでこられた、たてもん祭りを地域の皆さんや市政が一緒になって守り、盛り上げていこうとされています。今年のたてもん祭りでは、新しい試みとして観覧席が用意されています。今回は初めての試みなので来賓の方を招待されていますが、来年以降は評判を聞きながら一般のお客さんにも利用して頂きたいと考えていらっしゃいます。
新しいことにも挑戦しながら、伝統を守り続ける皆さんを私達も応援していきたいですね。
2016年(平成28年)12月1日、魚津のタテモン行事など全国33団体の「山・鉾・屋台行事」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
魚津市 たてもん祭り
2016年8月5日(金)・6日(土)
会場:魚津市諏訪町1-16 諏訪神社周辺
※富山県魚津市 諏訪神社 「たてもん祭り」 Facebook
(https://ja-jp.facebook.com/FuShanXianYuJinShitatemonJi)
※たてもん祭りの写真は、魚津市教育委員会よりごご提供いただきました。
(2016年7月29日)