美術鑑賞への入り口
富山県黒部市に拠点を置き、舞台セットやイベント装飾を手がける一方、独創的なオリジナル作品を造っておられる清河北斗さん。今回は、日本画家・平井千賀子さんと共に開催されている二人展の会場にお訪ねしました。
会場に入ると、周囲を威圧するかのように二対の〈一卵性双生馬人〉が、なんと入口に背中を向けて立っとります!2011年(平成23)、フランスのパリで開催された「ジャパンエキスポ」のメインエントランスにも展示された作品ながです。一見すると怖そう…でも暫く見とると、「どうして双子?どっちがお兄さん?お父さんお母さんもこんな顔?」あるいは「何か分からんけどカッコいい!」など、想像がどんどん膨らんでくるがです。清河さんは、「そんな感じ方でいいと思う」とおっしゃいます。
「見る人が見た時の衝動や、これは何だろう?という疑問や高揚感と、その人の感性でもって自由にいろんな空想を巡らし楽しんでもらえればいいんです。」
美術鑑賞というと、何やら敷居が高いように思う方もおられると思うがですけど、清河さんの作品は自由に感じてもらえればええがです♪
“造形職人”として”造形作家”として
清河さんは東京で専門学校を卒業後、現代美術の制作活動を経て、24歳で造形会社に勤務されました。イベント関連の展示物や立体造形物、アニメ映画関係、ゲームキャラクター、着ぐるみなどを制作する会社で10年間、いわば”職人”として活動してこられたがです。その技術と経験を携え、2008年(平成20)、地元黒部に戻って来られました。当初、名刺やパンフレットを持って営業活動に走り回る事を想像しとったそうながですけど、実際は早々から仕事が途切れることがなかったそうながです。依頼されたお仕事を職人としてこなす一方で、作家としてもご自身が造りたいものを発表してこられました。
「”職人”と”作家”としての活動に垣根は作らないようにしています。作家だからそういう仕事はしませんとか、作家ではないからそういう仕事はできませんという様なことはしないようにしています。」
作家という面を大事にしておられる一方、職人として図面どおりに仕事をすることもあるし、また、こんなことができたらいいなと思っている人が自分に声を掛けてこられ、相乗効果で期待に応えられるものが出来る事にやりがいを感じられるがだそうです。
森羅万象に宿る生命
清河北斗さんの作品に、2009年(平成21)富山市の山王祭の歩行者天国で展示された、バイクにまたがる阿吽像〈象駆輪 金剛力士像 type A〉と〈象駆輪 金剛力士像 type UN〉があります。清河さんの作品は、このような等身大のものや大きいものが殆どながです。大きなものを造るのがお好きだそうで、「第一に、大きいものには何といってもカッコいいし(笑)、見えるもの・見えないものを含めて大きなもの、例えば巨大な山や岩、朝日や夕日に対して感じるような畏敬の念や恐れ、驚異を感じて思わず立ちすくんでしまいます。」とのこと。
また、あらゆるモノや現象に神や霊魂が宿ると考える”アニミズム”と言われる考え方があるがです。自分の車やパソコン、いろんな道具に名前をつけたり、「今日はよく走ってくれたね、ヨシヨシ」などと言いながらなでてあげたりするがも、その表れの一つかもしれません。無機質なものに生命があると考え、まるで生きているように人と同じく信頼を寄せて大切にする。八百万の神を奉る、何とも日本人らしい考え方ちゃちゃね♪
「みんな生きていたら面白いですよね。逆に、それらのものに見られているかもしれないと思うと、失礼な事や変な事は出来ないですね」とおっしゃる清河さん。確かにそういう気持ちで見ると、車の形をした〈駆輪 水平式低床型 骨相像〉も生きとるが?走り出すが?なんて思ってしまうかもながです!!