じんじん祭と桜井さん
黒部市で毎年6月24日から6月26日の3日間に亘って行われるじんじん祭は、80年以上続く伝統行事。三日市大町の交差点から東三日市の天神社まで、たくさんの香具師(やし)が軒を連ねることから「やしまつり」とも言われています。黒部っ子が毎年楽しみにしとるお祭りながですが、じんじん祭の起源には桜井さんが深く関わっとられたがです。
三日市では、家を建てるときに地ならしして最初に出てきた石を地神として敬い、家の隅に祠を建てて地神様(屋敷神)をお祀りする風習がありました。が、時代の流れとともにその風習は風化していったがです… 当時の宮司の桜井吉次郎さんは、三日市地区に祀られていた20数家の屋敷神が、お祀りもされず粗末に扱われていることに心を痛められました。桜井さんは、三日市町長や氏子総代と話し合って、屋敷神を祀っている家々を訪ねて合祀の理解をもらい、約4年の歳月と準備期間を経て大正14年(1925)6月24日に盛大な合祀祭を行いました。三島の大ケヤキの根元にあるおまんじゅうのような形をしたのが合祀塚で、「じんじん祭」の起源となったがです。
鶏は神様の使い
三島町から大町に向かって伸びる道の街頭には、金色の鶏が飾られとります。三島さまでは鶏は神様の使い。氏子が鶏肉を食べると不幸が続くといわれ、鶏肉を食べる人がいなかったとか。そのため、昔三日市のお肉屋さんでは鶏肉を扱っていなかったそうながです。桜井さんのお家では鶏肉を食べることは禁忌とされ、お正月の3が日には卵も食べてはいけないそうな。「小学校の頃、給食で鶏のから揚げなどが出ると、まわりの友達は競って私の唐揚げをとり合いました。なかには一か月の給食だよりを見て、予約する友達もいました。」と桜井さん。現在ではほとんどの三日市の家庭で鶏肉が食べられていますが、依然として鶏肉が食卓に上がることはなく、外食の際にも決して食べないという氏子さんの家庭もあるようながです。
目に見えないことの大切さ
八心大市比古神社は三日市の各町内にあるお宮さんの総社。なので、総社の宮司を務められる桜井さんは多くの町内の祭事をとり行います。日頃から厄払いや祈願で神社を訪れる氏子さんへの神儀の他にも、結婚式が行われる会場へ出向いたり、各地のお祭りに呼ばれたりと宮司さんって忙しい!そんな中最も忙しくなるのは、お正月。毎年三が日には20,000人もの人が初詣に訪れるそうながです。桜井さんは12月に入ると参拝客の多くが楽しみにしているハズレのないくじ引きの準備に取り掛かります。5,000個用意されるという景品は、実はすべて手作業で袋詰めされます。宮司さんがひとつひとつ真心をこめて袋詰めしてくれていると思うと、なんだかご利益もさらに上がるような気がして嬉しいがです。でも、実はこっそりアルバイトを雇っとるがかと思っとりました(@_@;) 「賞味期限があるものなど、少しでも長持ちさせるために12月に入ってから作業を始めるんです。アルバイトさんとか雇っているところもあるみたいですが、私の場合はなんとなく毎年手作業ですね」と桜井さんは笑います。
春になると「まち歩き」や各種イベントで訪れるお客さんに、神社の由緒や植えられている桜についての説明をする桜井さん。人前で話をするのが苦手なそうですが、来られる方に少しでも分かりやすく伝えたいという思いから、忙しい時間を割いての勉強も怠りません。
三日市の歴史を語る上で欠かせない存在である桜井さんは、先祖代々地元の人々と触れ合いながら、地域のため、人のために貢献してこられたがですね。これからも地域に根差した神社の宮司さんとしてご活躍に期待します☆
参考資料
『式内社 八心大市比古神社誌』(八心大市比古神社奉賛会)
『目で見る三島町いまむかし』(三島町町内会)
『三日市まち歩き』(郷土史家 八木均)
【八心大市比古神社(三島神社)】
黒部市三日市3185
TEL:0765-52-0673
アクセス あいの風とやま鉄道黒部駅より徒歩10分/富山地方鉄道電鉄黒部駅より徒歩2分
(2013年01月11日)