リニューアルの難しさ
寺崎さんは、現役時代に中学校で英語の教師をしつつ、地域の伝統文化に大変興味があり研究されとった方ながです。作詞は今回が初めてだったそうで、くろべ踊りのメロディーに合わせて、語呂よく黒部の名所を表現するのに大変苦労されたとか。「くろべ踊りの歌詞にも、旧黒部市の名所や名物が登場するのですが、同じ言葉で表現してしまっては盗作になってしまう。かといって、くろべ踊りに出てきた名所を全て省いてしまっては、黒部の魅力をPRしきれなくなってしまう。くろべ踊りの作詞者である中島太一さんに同じ名所を使うための許可をもらおうとしたけど、すでにお亡くなりになっておられたので、くろべ踊りを作曲された椿秀雄さんにお許しをいただいたんです。」と寺崎さん。一方で、寺崎さんの作詞に合わせて振り付けを担当された高山さんは、幼いころから日本舞踊に親しまれ、その後指導者となって多くの生徒さんを教えてこられた方ながですが、今回の振り付けは試行錯誤されたそうです。「今までも色々と振り付けを考えてきたけど、トロッコ電車や新幹線みたいな機械的な物を踊りで表現したことがなかったの。日本舞踊や民謡の踊りの表現ではないものだから、周りの人からも納得してもらえるよう何度も振り付けを変更したの。」
みんなから愛されますように
「黒部市の踊りとして市民に定着するには長年積み重ねていく必要があって、そのためには明るく覚えやすく親しみのあるものにしたかったんです。」と、寺崎さん。元々料亭のお座敷唄として出発したルーツがある黒部おどりには、男女の恋愛模様を歌った歌詞が多かったがですけど、それでは現代の子供から大人まで大勢の人には受け入れてもらえないと考え、近い将来にやってくる新幹線や有名なトロッコ電車などを歌詞に取り入れ、より夢が感じられる歌になるように心がけられたそうながです。歌詞は北陸最長寿のソメイヨシノで黒部の名所でもある百年桜から始まり、「黒部峡谷いで湯宇奈月ヨ」や「よどむ愛本大蛇の渦に」といった、それまでにはなかった旧宇奈月町の名所を追加しました。さらに「海と山から新幹線に 乗せてよあの夢 運ぶよこの夢ヨ」といった平成26年度に開通予定の北陸新幹線についても歌い、新しくなった黒部市の魅力をたくさん盛り込んだ歌になったがです!!
目標は市民総出で町流し
完成した新黒部踊りは、くろべ納涼楽市で2年に亘って町流しが行われたほか、芸文協まつりなどでも披露されました。地元の小中学生にも部活動で教えるなど、若手の育成にも力を注いでおられますが、一般からの参加者はまだまだ少ないがだそうです。「魚津市のせりこみ蝶六のように市民みんなが参加できて、盛り上がれる黒部市の踊りに成長させたいです。新幹線の新駅が開業するあかつきには、若栗の新駅前で、市民一丸となった新黒部踊りで観光客をお迎えしたいですね。」と、高山さん。
地域の活性化を目的に、数え切れないほどのお祭りや催しが企画があれど、長い間継続していくのは本当に大変なこと。実際、地域の伝統芸能なども、受け継がれることなく消滅していくものも多いがです…。
花街のお座敷唄として作られてから新黒部踊りに到るまで約80年、黒部の踊りはその時代を反映して、必要に応じて変化し、発達してきました。寺崎さん、高山さん、黒部の踊りを伝承してくれてありがとうございます。黒部っ子の皆さま、黒部の魅力が満載の新黒部踊りで、元気な黒部市をアピールしましょう!
(2012年10月26日)