子どもの世界
帰国から3年、ようやく保育所設立の認可が下り、昭和50年(1975)4月に0~2歳の乳幼児を専門に預かる保育所「黒部愛児保育園」が開園しました。
「0歳から2歳というのは、人間の基礎がつくられるとき。親のもとで育てられるのが理想ですが、集団のなかで学ぶこともあります。」おむつ替えひとつとっても、「気持ち悪かったね、さっぱりしたね。」と言葉で伝えることが重要だとか。「口先だけではダメ。大人が心からの気持ちを言葉にすることで、子どもにその感情がインプットされていくんです。」
子どもに関わる仕事ができて本当に幸せ、とおっしゃる岩井さん。「子どもの世界は感動することがいっぱい。その感動をいただいて、視線を共有し、共感することが大事です。大人が○○してやっている、と思っていると、子どもの心と一緒になれない。子どもの心のなかに入って受け答えができたら、どんなに楽しいか。」言葉の端々から子どもたちへの深い愛情が感じられて、子どもを育てることの素晴らしさを教えてくれるがです。
結ばれた縁
保育所以外にも、里親として何人ものお子さんを育てた経験を持つ岩井さん。「私にとって、縁のあった子はみんな可愛い。私しかいない、と思うと、血が通っていなくても愛おしい。好きとか嫌いとかではなく、ただ抱きしめたくなるんです。」
東信庵で育った里子のみなさんは、黒部をふるさとと思い、今でも気にかけてくれるんだとか。「田んぼに水は入ったか、僧ヶ岳の雪絵はどうなっている、と電話がかかってきたりします。単に自分が育った場所、というだけではなくて、景色や香りなどが子ども時代の思い出と結びついて、それがふるさととの絆になっているんですね。」
これまでの実績を買われ、平成18年(2006)に黒部市三日市保育所が民営化された際、市から運営を任されました。「私は、ただ子どもが可愛いからやってきただけ。事業家ではないし、お断りしようと思ったんですが、三日市保育所創設者、森丘とめ先生との深いご縁もあり引き受けました。」子どもたちとの微笑ましいエピソードは尽きることがなく、「子どもといたら若くなるばかり。」と笑顔でおっしゃいます。
ふるさとで何ができるか
子どもたちには、ふるさとを愛する人になってほしい、とおっしゃる岩井さん。「次世代をどう育てるか、ということを抜きに、これからのまちづくりを考えることはできません。きれいな山や夕日の景色を子どもたちと眺めることで、ふるさとの思い出が少しでも心に残ってくれたらと思っています。成長して黒部を離れることがあっても、ふるさとに帰りたいという気持ちがどこかにあれば、いつか戻ってくる。そういう人こそ、本気になってふるさとのために働いてくれる人。先頭に立って行動し、次に続く人たちの模範にもなってくれると思う。」子どもたちの心に蒔かれた種が大きくなってどんな花を咲かせるか、もちろん今は分からんがですけど、岩井さんの思いはきっと子どもたちに届いとるがです!
「子育ては、今すぐには拍手をもらえない仕事。だからこそ気が抜けないし、今を大事にしないといけない。」かけがえのない一瞬一瞬の積み重ねが、子どもたちの未来をつくっていくがですね。子どもたちの健やかな成長を、岩井さんと一緒に見守っていきたいと思うがです☆
(2012年6月25日)