フィールドワークをもとに展示
魚津水族館で展示している魚介類は、一部を除き多くは地元でとれるもの。水族館のスタッフが自ら網やひしゃくを持って、採取してくることもあるそうです。「自分たちで調べているから、そこにどれだけいるかもわかる。水族館では、地元の海や川に普通にいる生き物ばかり、本物を展示しています。」
客寄せのために、めったにお目にかかれない珍しい動物を展示する方法もあるけれど、魚津水族館では本来の博物学の考え方に則って、「地域を見せる」ということにこだわっておられるがです。「本だけの知識や、借りものでの展示はしていません。マニアックだと言われることもありますが、本物がわかる人には楽しんでもらえると思います。」
泳いでいるお魚さんたちが、近くの海にいたものだと思うと、俄然、親近感が湧いてくるがです。稲村さん曰く、「水族館は、自然との接点を作る場所。水族館をきっかけに実際の自然のなかへ出かけていったり、逆に外で体験してから水族館で勉強してもらってもいい。そのためのゲートなんです。」
現場のスタッフの力
毎年春に行われているホタルイカ発光実験では、実際にホタルイカが光る様子を間近で見ることができ、大きな模型を使った解説も、わかりやすくておもしろいがです♪ 「観察や研究に基づいて、正しい情報を提供していくのが水族館に勤める者の責務。さらに、毎回違うお客さんに対して、満足していただくために工夫するから、話す方もだんだん上手になるんです。」
水槽がキレイなことも、自慢できることのひとつ。「うちは古いけど、水槽の管理はどこの水族館にも負けない。それが魚津水族館の飼育係のクオリティーだし、展示内容についても、一流だと思っています。」
魚津市制60周年を記念してまとめられた冊子『魚津のさかな』(平成24年3月発行)では、稲村さんは監修で参加するにとどまり、執筆は水族館のスタッフにまかせたそうです。「自分が書いたら、彼らは読むだけになってしまう。一緒に作れば、話をするなかで僕の経験や知識を伝えていけますから。」稲村さんの言葉には、水族館のスタッフのみなさんに対する厚い信頼を感じるがです!
水族館の存在意義
現在の水族館は昭和56年(1981)に建てられたもので、老朽化が進んでいるため長くは持たない、とおっしゃる稲村さん。「水族館を閉じるのも選択肢のひとつではあるけれど、なくなってしまうのは寂しい。僕の仕事は、100年の歴史をつないでいくこと。」
最近では、過去の水族館の写真やパンフレットなどを収集しておられるとか。「歴史を伝えようと思っても、資料が残っていないんです。こういうものも、昔のことを知る手掛かりになるので。」
そもそも水族館が必要なのか、という議論もあるところで、各方面に存続のためのお願いを続けておられます。「新しい建物をつくるにしても、魚津だけでやれ、と言われたらおそらくできないでしょう。富山県内の博物館で、うちほどの集客力があるところは少ない。みなさんに『なくさないで。』と言ってもらえる存在でありたい。」
伝統に甘んじることなく、常に将来のことを見つめながら水族館の在り方を問い続けている稲村さん。これからも、進化していく魚津水族館から目が離せんがです!
富山県魚津市三ケ1390
TEL:0765-24-4100
FAX:0765-24-4128
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 12月~3月中旬の月曜日と祝日の翌日、年末年始(12月29日~1月1日)
入館料 一般(高校生以上):730円、小学生・中学生:400円、幼児(3歳以上就学前まで):100円
アクセス 北陸自動車道 魚津I.C.より車で15分/あいの風とやま鉄道魚津駅よりタクシーで約10分/富山地方鉄道 西魚津駅より徒歩約20分/魚津市コミュニティーバス(市街地巡回ルート・東回りルートまたは西回りルート)水族館前下車すぐ
ホームページ http://www.uozu-aquarium.jp/
(2012年4月20日)