四季折々の花を飾る
能登さんいわく、「お花のある日は、家に帰るととりあえず掃除する、という生徒さんもおられるみたい。」きれいなお花にふさわしい空間をつくる、それも大事なことです。床の間のあるおうちが少なくなり、おもてなしの空間である玄関ですら、お花を飾る場所がないことも。「テーブルに飾る花として、フラワーアレンジメントがありますが、やっぱり外国の文化だし、日本のいけばなとは違う。少し寂しい気がします。」
オアシス(吸水スポンジ)にたくさんの花を盛るフラワーアレンジメントに対して、いけばなは「3本あれば形になる」。花材が少なくても、空間を埋めることができるのが特徴です。
能登さんは、お稽古をやめたとしても、年に4回はおうちでお花を飾るように、と生徒さんにおっしゃっているそうです。4回というのは、「お正月、ひなまつり、お盆、お月見」。いずれも大事な節目であり、お花とは切っても切れない行事ばかり。四季折々のお花が、暮らしに彩りを添えてくれるのは間違いありません。
黒部らしさを考える
黒部のまちづくりにも関わりの深い能登さん。「三日市の町も、古い家がどんどんなくなっている。古いものは、壊してしまったらおしまい。何軒かだけでもいいから、昔風の町並みを残していけたらいいと思っているんですが。」
数年後に迫った新幹線開通も、黒部にとってはひとつの転機。「町として、これといった特徴がなかったら、新幹線が来ても素通りされてしまう。」と危機感を持ち、かつての宿場町の面影を再現できないかという思いを持っておられます。
魚の駅生地の「できたて館」・「とれたて館」の屋根の上に、石を並べたのは能登さんのアイディア。生地を題材にした田中冬二の詩「ふるさとにて」の一節、「板屋根に/石をのせた家々/ほそぼそと ほしがれひをやくにほひがする」をもとにしています。それはまさに、漁村の原風景とも言うべきもの。実際には失われつつある風景ですが、ここにこうしてあることで、風化せずに残り、伝えられていきます。
さすがは達人!
お花の魅力を引き出すように、黒部の魅力も引き出してくださっておるんじゃのう。
お花に携わる仕事が誇り
「いけばなは日本の文化。縁あって、いけばなを仕事にしています。お花に携わっていることは、楽しいし誇りに思う。」
海外に赴任される方に、いけばなと着付けをセットで教えることもあるそうです。「海外に行ったら、自分の国の文化を紹介する場面が必ずある。着物などは、なかなか普段着ることはありませんが、もったいないことだと思います。」
以前、国際交流事業で海外へ渡り、日本の良さを改めて感じたという能登さん。「日本人は、働き者で正直、礼儀正しいというイメージがあって、海外でもこころよく迎えてもらいました。そういうイメージを作ってきた先人たちに感謝したし、日本はいい国だと思いました。」
国際交流の場では、いけばなも「日本」を語るうえで重要なポイント。いけばなという世界に身を置いていると、美的感覚のみならず、国際感覚も磨かれるのですね。
お花を通じて、日本の文化を伝えていく仕事。誰にでもできることではありません。これからも、素敵な作品を作ってください!
わたくしも「やまとなでしこ代表」として、日本の魅力を伝えに行きたいがです!